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食中毒予防(食中毒原因菌)

食中毒とは

何らかの有毒・有害物質が食品(飲食物)の中に混入していて、それを飲み食いした人が急性胃腸炎(腹痛・下痢・嘔吐など)等の急性障害を起こすことを食中毒といいます。食中毒の原因となる物質には、フグ毒やキノコ毒のような天然毒やメタノール、砒素、シアン化物などの有害化学物質もあります。特に食中毒の原因物質が細菌そのものであるか、または食品中で細菌が増殖する際に産生する毒素である場合を細菌性食中毒といいます。ある統計に依れば、食中毒の9割以上が細菌性食中毒であり、細菌の増殖しやすい暑い時期をピークにして発生しています。以前は暑い時期に集中していましたが、暖房や加工惣菜食品の普及で冬期の食中毒発生率が高まってきています。

おもな食中毒の原因菌

腸炎ビブリオ———————————–

発生事例のほとんどが7~9月に集中していますが、海外旅行後の下痢症として他の季節にも単発的に見られます。特に細菌では海外渡航の経験のない人に単発的に発生する事例が増えており、輸入食品との関連が疑われています。

症状

下痢・腹痛・発熱・嘔吐・悪心などの急性胃腸炎症状が主です。下痢は、大半の場合は水様便ですが、時には粘液や血液が混入します。稀に循環器症状を起こして死亡する例があるので要注意です。一般に下痢、嘔吐が激しいため、脱水症状がある場合には輸液療法が必要です。通常、2~5日で治癒します。

細菌としての特徴

腸炎ビブリオの大きな特徴は好塩性という性質であり、1~8%の食塩を培地に加えるとよく増殖します。3%前後の食塩を含んでいる海水中は腸炎ビブリオにとってはとても増殖しやすい場所です。水温が15℃以上になるとこの菌は海水中または海水プランクトン中で増殖を始め、増えた菌が魚介類に付着します。日本に腸炎ビブリオの食中毒が多いのは魚介類を好んで、しかも生で食べるためです。

予防するには

腸炎ビブリオは一度に大量の菌 (1010~109)を食べないと発症しません。従って腸炎ビブリオ食中毒の予防の基本は大量の菌を体に入れないことです。一般的に、食中毒予防の第一歩は食品の微生物汚染を防止することです。しかし、腸炎ビブリオは海水中に生息し、魚介類に付着しているので、魚介類から完全に取り除くことはほとんど不可能です。従って、付着している菌をいかに増やさないかに注意することが大切です。そのためには、①買ってきた魚介類は必ずすぐに冷蔵庫に入れる、②冷蔵庫に生のままで長期間放置しない、等の注意が必要です。

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サルモネラ———————————–

サルモネラ属菌は、広く爬虫類、鳥類、哺乳類に自然感染を起こす病原菌です。ヒトに全身感染症を起こすチフス菌、パラチフス菌は別格としても、サルモネラは腸管局所感染による急性胃腸炎(サルモネラ症)の原因菌となります。近年では鶏卵を汚染するサルモネラ・エンテリティディスが蔓延し始め、問題となっています。

症状

発症にはかなり大量の菌を必要とするため、食物中での増菌が起こった汚染食物の摂取が原因となります。潜伏期間は12~72時間(多くは18~36時間)で、発熱または腹痛で急激に発症します。さらに悪心、嘔吐、下痢(しぼり腹を伴う)を主症状とし、発熱は38℃前後となります。便は水様でときに粘血便となります。多くは数日で自然回復しますが、ときに脱水状態が著明で虚脱状態になることや、菌血症、敗血症を併発することもあります。特に小児の場合は感受性が高く、敗血症、髄膜炎を起こしやすくなります。宿主側に重大な基礎疾患、免疫不全がある場合は、他の日和見感染症と同様に全身感染症となることもあります。

細菌としての特徴

サルモネラは腸内細菌科に属するグラム陰性の桿菌で芽胞を形成しません。大部分は周毛性の鞭毛が生えており、運動性を示します。

予防するには

サルモネラは哺乳類から爬虫類にいたる多くの動物に常在しています。従って、食肉類の取り扱いには十分注意し、よく加熱してから食べましょう。また、ペットの汚染にも注意が必要です。
 80年代になってヨーロッパからサルモネラ・エンテリティディスによる鶏卵・鶏肉の汚染が急激に広がりましたが、卵を加熱せずに調理する食品の増加に伴ってこの菌による食中毒が急増して問題となっています。原則として生卵を使った食品は調理後7時間以内に食べましょう。

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黄色ブドウ球菌———————————–

ブドウ球菌食中毒は黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の産生するエンテロトキシンによる毒素型食中毒です。エンテロトキシンは耐熱性毒素で100℃、30分間の加熱でも破壊されません。従って、一旦ブドウ球菌が増殖してエンテロトキシンを産生すると、後から加熱して菌を殺すことはできても毒素は不活性化できないため、食中毒の防止はできなくなります。。

症状

毒素型食中毒であるため、潜伏期間は感染型食中毒に比べて極めて短く、原因食品摂取後1~6時間、平均3時間で症状が現れます。原因物質であるエンテロトキシンが胃および小腸上部で吸収され、臨床症状が現れると考えられています。嘔気、嘔吐、腹痛、下痢を主とする症状を呈します。下痢は通常水様便ですが重症例では血便や粘液便を伴います。発熱はあまり見られませんが、ときに微熱を伴うときもあります。経過は良好で1~2日で回復し、死亡例はごく稀です。

細菌としての特徴

ブドウ球菌はグラム陽性の球菌で、顕微鏡下で観察するとブドウの房状の配列をしています。発育温度域は6.7~46℃で至適温度は30~37℃です。エンテロトキシンの産生は10~46℃の温度域で見られますが40℃で最も早く産生します。食塩に対する抵抗性が強く16~18%の食塩濃度でも増殖することができます。ビブリオのような海洋性の細菌を除いた通常の細菌は、食塩濃度3%以上では生育することができません。検査では、ブドウ球菌のこの性質を利用した選択培地が使用されています。

予防するには

ブドウ球菌は熱処理(60℃、30分間)や消毒により容易に殺菌することができます。しかしながら、この菌は人や動物を始め自然界に広く分布しているため、衛生状態を保つ努力を怠るとすぐにブドウ球菌による汚染が広がります。従って、ブドウ球菌やそれが産生するエンテロトキシンが加工食品や調理器具から検出されることは、一般に衛生状態が悪いことの指標となります。普段から衛生管理を徹底し、調理の前後の手指・器具の洗浄・消毒を必ず行いましょう。

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ウェルシュ菌———————————–

ウェルシュ菌による食中毒は欧米で多くの報告があり、日本でも、統計を取ると各年度にばらつきはあるものの毎年約10件程度の食中毒発生例があります。しかしながら患者数は500~2500名と多く、このことから本菌による食中毒が大規模なものであることがわかります。

症状

ウェルシュ菌による食中毒は原因となる食品を摂取してから8~20時間、平均12時間の潜伏期間を経て腹部飽満感に始まり、腹痛と下痢が続きます。嘔吐、発熱はほとんど見られません。下痢は1日数回で2日後には全快することから明らかなように、食中毒としては軽症です。しかし、非常に稀に重症の場合、1日10回以上の粘液血液の混じった水様便を呈することがあります。

細菌としての特徴

クロストリジウム属に分類されるウェルシュ菌(Clostridium perfringens)は、偏性嫌気性のグラム陽性桿菌で、生育条件が悪くなると栄養型細胞の端に卵型の芽胞を形成します。偏性嫌気性菌の中では嫌気条件の要求度が低く、また、鞭毛を持たないため、運動性を示しません。芽胞はそれほど熱に強くなく、多くの場合、100℃、数分の加熱で死滅しますが、一部は熱耐性(100℃、5~6時間でも生存)です。

予防するには

ウェルシュ菌は自然界、ヒト、動物等に広く分布しているため、本菌食中毒の主な原因食である獣肉、魚介類は調理する前にすでに汚染されていると考えられます。更にウェルシュ菌芽胞、特に耐熱性芽胞は菌の特徴にも書いたように通常の加熱調理では死滅しません。また、一般的な食中毒菌と同様、ウェルシュ菌による食中毒を起こすには通常10~10個以上の菌を摂取する必要があると考えられます。このようなことから、食品のウェルシュ菌汚染を防ぐことは困難ではありますが、調理後、菌が増殖する前に食べてしまえば問題は起こりません。調理後の長時間保存は避けましょう。

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ボツリヌス菌———————————–

ボツリヌス食中毒はボツリヌス菌(Clostridium botulinum)が作る毒素により引き起こされます。本中毒は典型的な毒素型食中毒であり、あらかじめ食品中でボツリヌス菌が産生した毒素(ボツリヌス毒素)を摂取することにより、特有の中毒症に至ります。食品中のボツリヌス菌自体はたいした問題ではありません。毒素はごく微量でヒトを死に至らしめることができます。動物実験では 0.1ng(1mgの1千万分の1)程度の毒素量でマウスを殺すことが示されています。

症状

ボツリヌス毒素は、その作用の仕方から神経毒素に分類されています。摂食された毒素は腸管から吸収され、血液中に入って全身を巡り、最後には筋肉を収縮させる神経の先端(神経接合部)に作用し、アセチルコリンの放出を妨害します。すると筋肉は収縮できなくなり、全身の筋肉が弛緩した状態のままになります。最初は、目眩や頭痛で始まり、視力低下やものがに二重に見えるといった症状が現れます。さらに進んで全身の筋肉の弛緩が顕著になるとついには呼吸麻痺に陥り、死亡します。潜伏期間は12~24時間で、毒素型食中毒としては長いのですが、これは、毒素の特異な作用の仕方のためです。

細菌としての特徴

ボツリヌス菌の第一の特徴は特異な毒素を産生することですが、第二の特徴はウェルシュ菌と同じく嫌気性菌だということです。食品の鮮度を保つためや保存性をよくするために真空パックにすることがありますがボツリヌス菌は、このような環境でこそ、よく増殖します。また、第三の特徴は芽胞を形成することです。芽胞は過酷な物理化学的環境因子に耐え、通常の調理方法でこの芽胞を殺すことはできません。

予防するには

ボツリヌス菌による食中毒は、この菌を死滅させ、増殖を防ぐ以外に予防方法がありません。そのためには以下のような処理のいずれかが必要です。加熱による芽胞の完全殺菌(120℃、4分、または100℃、330分。缶詰、瓶詰め、レトルト食品にのみ適用可)。 物理的(pH4.5以下、水分活性0.94以下、温度3.3℃以下)、化学的(亜硝酸ナトリウムのような抗菌剤の添加)方法による芽胞の発芽、菌の増殖の阻止。食品の摂食前の加熱による毒素の不活性化(80℃、20分または100℃、数分)。

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セレウス菌———————————–

セレウス菌による食中毒はアメリカやヨーロッパではかなり以前から報告されていました。日本でも近年報告例が増加してきています。

症状

下セレウス菌食中毒には、「嘔吐型食中毒」と「下痢型食中毒」の二種類があります。

  嘔吐型食中毒
嘔吐型食中毒では潜伏期間が1~5時間で悪心・嘔吐が主症状であり、この状態はブドウ球菌食中毒によく似ています。食品中で本菌が増殖して嘔吐毒が産生され、この毒の摂取により発症すると考えられています。ご飯、焼き飯など、米飯類が原因食品となって食中毒が発生する例が多いようです。
  下痢型食中毒
下痢型食中毒の場合、原因毒素は下痢原性毒素で潜伏期間は8~16時間です。腹痛・下痢が主症状で、症状および経過はウェルシュ菌食中毒に酷似しています。食品中に混在する本菌が腸管内で増殖し下痢原生毒素(エンテロトキシン)を産生して病気を起こすと考えられています。種々の食品が原因食品となっていますが、肉類・スープ類・バニラソースなどが多いようです。いずれの型の症状も全般に軽く、1両日中にはほとんど回復します。セレウス菌食中毒で死亡することがごく稀にありますが、それは嘔吐物を気管に詰まらせたことによるものです。

細菌としての特徴

セレウス菌は土壌細菌の一種であり、自然界(土壌・下水・塵芥など)に広く存在しています。グラム陽性の好気性菌で芽胞を形成します。蛋白質・多糖体などの高分子物質の分解活性が強く、このため、食品の腐敗や変敗の原因菌となります。食中毒を起こすには原因食品の中に10~10個/gという大量の菌が必要です。

予防するには

嘔吐型食中毒の原因となるセレウス菌は、100℃、30分の加熱にも耐える耐熱性の芽胞を形成するため食品中の本菌(芽胞)を死滅させることは困難です。発芽・増殖を抑制するのが本菌食中毒の予防の基本であり、原因食品として多い米飯類に対する具体的な予防法としては以下の様なことが挙げられます。

  • 一度に大量の炊飯をしない
  • 焼き飯などの調理加工から喫食までの時間を短くする
  • セレウス菌が増殖する10~45℃での放置を避けるため、調理後はできるだけ早く(2時間以内)冷蔵庫に入れる
  • 特に米飯を冷却するときは、小分けするか大きな容器に入れるかしてすばやく冷却する
  • 焼き飯に使用する食材は新鮮なものを使う
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カンピロバクター———————————–

カンピロバクターは、1940年以降、ヒトの血液から分離されたり、ヒトの下痢患者の糞便中から見つかっていましたが、この菌が限られた環境でしか生育できないためにその分離培養が困難で、この菌のヒトにおける重要性は不明のままでした。カンピロバクターがヒトの下痢原因菌として位置付けられるようになったのは1970年代後半で、ButzlerやSkirrowがこの菌の分離培養培地を改良してからでした。日本では1980年前後からその発生が知られるようになり、1982年に食品衛生法による食中毒原因菌として取り扱われています。

症状

カンピロバクター食中毒の場合、潜伏期は2~11日と長いのが特徴です。そのため、食中毒が発生したときすでに原因食品が廃棄されており、何が原因となったかを特定することが困難な場合が多くあります。症状は一般に軽いとされていますが、小児のほうが大人に比べて重い傾向にあります。頭痛、不快感に始まり、場合によっては発熱します。その後、嘔気、腹痛から下痢に至ります。下痢は、水様性下痢の場合と粘液や血液が混じる粘血性下痢の場合があります。予後は良好で、治療を必要とする場合はほとんどありません。

細菌としての特徴

この菌は通常大気の酸素濃度(20%)では生育できません。また、酸素の全くない条件でも生育できません。その生育に必要とする酸素濃度は3~15%で5%程度で最もよく生育します。また、大気中に菌を置いておくと死滅してしまいます。長さ0.5~5μmのグラム陰性菌で、螺旋形をしており、コークスクリュー様運動と呼ばれる特徴ある螺旋状運動をします。ヒトの下痢症と関連するカンピロバクター属菌としてはCampylobacter coliとCampylobacter jejuniの2菌種が挙げられ、これら2つは非常によく似た性質を備えています。

予防するには

カンピロバクターは、環境中に高率に存在し、しかも比較的少量で食中毒が成立するとても恐い菌ですが、熱と乾燥に弱いという弱点を持っています。この菌に汚染されている可能性の高い食材(鶏肉・生水・生乳)は火を通し、調理器具は乾燥状態を保つことが食中毒の発生を防止します。

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病原性大腸菌

大腸菌は普通は私たち健康な人間の正常細菌叢を構成する細菌の一つです。しかし、ある種の大腸菌が、乳幼児の下痢の原因となることは1920年代にすでに報告されています。現在までに下痢を起こす大腸菌が多数知られるようになり、それらは大きく以下の5種類に分類できます。

  • 病原大腸菌 enteropathogenic E.coli (EPEC)
  • 細胞侵入性大腸菌 enteroinvasive E.coli (EIEC)
  • 毒素原性大腸菌 enterotoxigenic E.coli (ETEC)
  • 腸管出血性大腸菌 enterohemorrhagic E.coli (EHEC)
  • 腸管付着性大腸菌 enteroadherent E.coli (EAEC)

ここでは、この五種類の大腸菌を総称して‘病原性大腸菌’と呼ぶことにします。

大腸菌の血清型とは———————————–

大腸菌の種類を示すとき、O157:H7というような表現をしますが、この記号は一体何を意味するのでしょうか。大腸菌は鞭毛と呼ばれる毛が生えており、これを回転させることによって移動します。ドイツ語で鞭毛のことをHauchといいますが、その頭文字をとって、鞭毛のことをH抗原と呼びます。この鞭毛は蛋白質でできていますが、菌によって構造が違うため、その型で菌を分類できます。H7とはこの菌の鞭毛が、タイプ分けの7番目に属することを示しています。また、大腸菌菌体の一番外側の部分は糖の重合体(多糖体)で覆われています。その種類は菌によって様々で、この多糖体の型を調べることにより菌を型別に分類することができます。この抗原は、‘鞭毛がない’という意味のドイツ語、Ohne Hauch からO抗原と呼ばれています。これもいくつかにタイプ分けすることが出来、O157は、157番のタイプに属していることを示しています。したがって、O157:H7は、157番タイプのO抗原を持ち、7番タイプのH抗原を持った型の大腸菌、ということになります。

病原大腸菌(EPEC)———————————–

1940年代半ばに、イギリスの乳児院において相次いで発生した大腸菌による下痢の集団発生の原因菌を調べて行くと、これらの菌がO55やO111等の特定の血清型に属することがわかりました。この一群の菌を腸内の無害の大腸菌と区別するため病原大腸菌と呼ぶようになったのです。その後この群に属する大腸菌の血清型が次々と報告され、現在では、O26、O44、O55、O86、O111、O114、O119、O125、O126、O127、O128、O142、O146、O158などがこの群に属しています。EPECによる下痢の臨床症状はサルモネラ属菌による下痢の症状とよく似ているため、診断には菌の分離が不可欠です。

細胞侵入性大腸菌(EIEC)———————————–

赤痢菌と同じような病原性を示す大腸菌で、この群に属する菌は、感染すると大腸の粘膜上皮細胞内に侵入して増殖するため、その結果、粘膜の壊死と潰瘍形成がおこります。このような感染機序は赤痢菌の場合と同じで、その感染による臨床症状は、発熱、しぼり腹、粘血便などまさに赤痢です。EIECは、その後の研究から特定の血清型に属していることが明らかにされました。現在、EIECの属する血清型としてはO28ac、O112ac、O124、O136、O143、O144、O152、O164、O167等が知られています。EIECの性状ほとんどすべての菌がリジン脱炭酸酵素が陰性である点で他の大腸菌と異なっています。また、乳糖非分解の菌が多いので通常の大腸菌用選択培地では分離しにくい特徴があります。運動性を示さない菌も相当数あり、これらの性状をよく知った上で菌の分離を行うべきです。

毒素原性大腸菌(ETEC)———————————–

ETECはEPECやEIECと異なり、2種類のエンテロトキシン(下痢原因毒素)を産生することがわかっています。一つは、60℃、10分の加熱によって失活する易熱性エンテロトキシン、(heat-labile enterotoxin, LT)、もう一つは100℃、10分の加熱によっても活性を失わない耐熱性エンテロトキシン(heat-stable enterotoxin,ST)です。ETECにはLT単独産生菌、ST単独産生菌、LT,ST両毒素酸性菌の3種類があります。これら3種類の菌の感染により、コレラ様の臨床症状を示します。下痢と腹痛が主症状で、稀に38℃程度の発熱が見られますが、通常、発熱は認められません。典型的な症例ではコメのとぎ汁様の水様便を排泄します。

腸管出血性大腸菌(EHEC)———————————–

1982年、アメリカのオレゴンで2~3月、ミシガン州で5~6月に同じレストランチェーンのハンバーガーが原因食と推定される食中毒が発生しました。症状は、全員が血便と激しい腹痛を訴えました。典型的な症例では最初水様便に少量の血液を認める程度でしたが、やがて鮮血便を排出しました。嘔気、嘔吐、悪寒を訴える例もありましたが38℃以上の発熱は稀でした。こうした臨床症状からこれらの症例は`hemorrhagic colitis’(出血性大腸炎)と名づけられました。原因菌を調査した結果、オレゴン州では6症例中3例から、ミシガン州では14症例中6例からE.coli O157:H7が分離されました。分離した菌はETECが産生するLTもSTを産生せず、細胞侵入性も示しませんでした。また、EPECやEIECの血清型にも属さないことがわかり、腸管出血性大腸菌(EHEC)と呼ばれるようになりました。EHECはVero細胞に対する強い細胞毒(Vero毒素)を産生します。現在まで、Vero毒素(赤痢菌が産生する志賀毒素と類似しているのでShiga-like toxinとも呼ばれます)には少なくとも4種類あることが知られています。EHECの属する血清型はO157:H7のほか、O26、O111などがあります。

腸管付着性大腸菌(EAEC)———————————–

1985年に報告された最も新しい病原大腸菌です。開発途上国の乳幼児下痢症患者からよく分離されることが知られています。わが国ではEAEC下痢症の散発事例はあるものの、食中毒、集団発生事例の報告は少なく、詳しいことは、まだわかっていません。

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