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環境生活センター鷹村憲司技術顧問による環境コラム「えこらむ」は、毎月月初に更新予定です。

 
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地球―この美しくもか弱きもの(2025年8月)

先月の初回の本コラムでは、一つの大きな生命としてとらえた地球の話をしました。今回はその続編として、地球の歴史と人類のあり方について「やさしいことをふかく」少し掘り下げてみたいと思います。

地球モデルー薄い卵の殻

環境講座でのワークショップのプログラムのひとつに「地球モデル」と「地球年表」というものがあります。

「地球モデル」は、大きな模造紙に半径32cm(直径64cm)の円を手作りコンパスで書きます。手作りコンパスは、ペンを2本用意してペンどうしを糸で結び、ペン先の間隔が32cmになるように調整します。1本を手で押さえて固定し(円の中心になる)、もう一本で円を描きます。円が描けたら、その2.5mm外側と1.5mm内側にしるしをつけます。

実は、これは地球なのです。地球の半径は約6,400kmです。今描いた円は縮尺2百万分の一の地球にほかなりません。では、円の外側と内側のしるしは何でしょうか。外側のしるしは大気圏、内側のしるしは地殻です。

大気の厚さは500kmといわれていますが、ある程度大気の密度がある成層圏までは50kmで、外側のしるしがこれにあたります。なお、大気の約75%が含まれる対流圏までは15kmです。一方、地殻の厚さは大陸では30~60km、海洋では5~7kmで、平均すると30kmほどです。

「地球モデル」の直径64cmの円の外側のわずか2.5mmに大気があり、内側のわずか1.5mmが地殻です。どこまでも続く大空、固く厚い大地は、地球規模でみればまさに「卵の殻」です。「地球モデル」は、それを作成することにより、「卵の殻」の薄さを実感するものです。この薄い卵の殻の中で人間は二酸化炭素を排出し、山を削り海を埋めているのです。天は落ち、大地は裂ける。何かあれば薄い卵の殻はたやすく割れてしまいます。地球は実に脆弱なものなのです。

地球年表―あっという間に壊してしまった

「地球年表」は、ロール巻きの障子紙を用意し、4.6mの長さに切断します。なぜ4.6mかというと、地球の歴史は46億年だからです。すなわち、「地球年表」では、10cmが1億年、1cmが1千万年なのです。参加者は各自資料を調べながら、この「地球年表」に地球誕生からこれまでに起こった生物イベントを書き込んでいきます。例えば、最初の生命の誕生は約40億年前といわれており、それから約22億年かけてやっと細胞に核を持つ真核生物が誕生します。植物でさえ、現在の多くの植物の基本形である維管束植物が登場したのは約4億7千万年前、恐竜が登場したのは約2億3千万年前、そして、ようやく人類(ホモ・サピエンス)が登場するのは約20万年前、「地球年表」でいうと紙の端からわずか0.2mmなのです。この段階で狭すぎて、もう書き込めません。

 
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地球年表の一例
 

地球が生まれてこの方4.6mの歴史の中で、人類が登場したのは紙の端から0.2mm、産業革命が起こったのはわずか0.00025mmです。この0.00025mmの間に膨大な量の二酸化炭素を吐き出し、46億年続いた地球の環境を大きく変えようとしているのです。わずか250年の時間で。私たちはなんと罪深いことをしているのでしょうか。

地球暦―われわれに来年はあるのか

「地球年表」と同様の趣旨のものに「地球暦」があります。これは地球誕生から現在までを1年の暦としたものです。すなわち「地球暦」では、1月1日の午前0時が地球誕生です。生命誕生は2月17日頃ですが、恐竜が登場したのはもう師走に入った12月10日頃、人類の登場に至っては、除夜の鐘がしきりに聞こえる12月31日23時48分、産業革命は12月31日23時59分58秒なのです。

 
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ああ、もう日付が変わってしまう。新たな年は来るのか・・・
僕は「あけましておめでとう」と言いたい
 

12月31日23時48分に登場した人類は、年が明ける2秒前から始まった産業革命により、それまで364日23時間59分58秒かけて生物・無生物が築き上げてきた地球を取り返しのつかないものにしようとしているのではないでしょうか?

まばたきしている間に、地球は壊れてしまうのです。

エコロジカル・フットプリントー地球があと2個必要

環境の足跡・・・「エコロジカル・フットプリント」(以下「EF」)という言葉があります。EFは、人間活動が地球環境に与えている負荷をあらわす指標で、人間一人が生活を維持するために必要な土地の面積のことをいいます。すなわち、食糧生産のための耕作地やCO2吸収のための森林など、私たちの生活を支えるために必要な土地―人間が自然環境を踏みつけている土地―のことであり、gha(グローバル・ヘクタール)/人という単位であらわします。

その国のEFを世界平均のEFで割れば、もし世界中の人がその国と同じような生活をしたとすると地球が何個いるかという数字になります(これを仮に「必要地球量」とよびます)。必要地球量が1を超えた状況を「オーバーシュート」といい、1970年代にはすでに地球はオーバーシュートの状況にあったといわれています。すなわち、昭和50年(カープが初優勝した年!)頃には、地球はその許容量を超えていたのです。環境省によれば、2018年現在、必要地球量は世界平均で1.7、日本は2.9、アメリカに至っては5.1です。

当たり前ですが、かけがえのない地球はひとつしかありません。そしてその地球は薄い殻に包まれたとても脆弱なものなのです。

もし、世界中の人が日本と同じような生活をしたとすると・・・

 
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もし、世界中の人がアメリカと同じような生活をしたとすると・・・

 
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アメリカは論外にしても、日本がぜいたくなのか、世界が貧しいのか・・・かけがえのない宇宙船地球号に生きる市民の一人として、日本人はこんな生活をしていていいのでしょうか?

Think Globally, Act Locally・・・私たちは何をすべきなのでしょうか?

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「みんなの生命(いのち)をまもる」ということ (2025年7月)

ごあいさつ

「むずかしいことをやさしく やさしいことをふかく ふかいことをおもしろく おもしろいことをまじめに まじめなことをゆかいに そしてゆかいなことはあくまでゆかいに」・・・井上ひさしの言葉です。

7月から環境コラム「えこらむ」を毎月月初に本ホームページに掲載することになりました。環境に関することや社会の様々な事象を、むずかしいことをやさしく、やさしいことをふかく、ふかいことをおもしろくご紹介していこうと思っています。みなさまの琴線に少しでも触れることができたら幸甚です。

土や石にも生命(いのち)がある

わたしたち広島県環境保健協会の基本理念は、「みんなの生命(いのち)をまもりつづけたい」です。ここでいう「みんな」とは、地球上の人間や動植物を総称しています。

ところで土は、単に石が細かく砕かれてできたものではありません。土壌中には様々な微生物が生息しており、その数は土壌1グラム中に細菌だけでも100億を超えるといわれています。植物の遺骸である腐植や、動物の死骸、それらを分解するミミズなどの目に見える生き物から細菌や菌類など目に見えない生き物まで多くの生き物が「つながって」生き、土を作っているのです。私たちも死ねば「土にかえる」。土は生きているのです。

であれば、土も「みんな」の仲間なのです。さざれ石は巌となり、風水でまた砕かれて土になる。日本人は古来よりその循環を肌で知り、土や石にも生命があり、神が宿ると考えてきたのです。仏教では、心を持つ人間だけでなく、心を持たない山や川、草や木など、すべてのものが仏になれると考えます。これを「悉皆成仏」(しっかいじょうぶつ)といいます。

 
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植物や動物、風や水の力で土はできる
 

「風水でまた砕かれて土になる」と書きましたが、尽きることのない川の水はどこから来るのでしょうか?それは雨が降るからです。では、雨の水はどこから来るのでしょうか?それは雲ができるからです。では、雲はどうしてできるのでしょうか?それは海の水が温められて蒸発するからです。では、海の水はどうして減らないのでしょうか?それは川が水を供給するからです。というふうに、水も地球規模で循環しているのです。

土や石も生きている。水も生きている。それをよりどころにして人間や動植物が生きている。それらがかかわりあって、つながりあって、地球という大きなひとつの生命をつくりあげているのです。

 
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地球は大きなひとつの生命(いのち)
 

宇宙船地球号

「宇宙船地球号」は、アメリカの思想家バックミンスター・フラーが今から60年以上も前に提唱した言葉で、地球という閉ざされた系の資源の有限性を主眼にとらえたものでした。その思想は1992年の地球サミットの中心概念となった「持続可能な開発」として受け継がれ、近年ではSDGsとして再構築されています。

 
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フラーの「宇宙船地球号操縦マニュアル」は、ちくま学芸文庫から出版されている
 

映画の世界に目を向けると、古くはタルコフスキーの「惑星ソラリス」や宮崎駿の「風の谷のナウシカ」、近年ではジェームズ・キャメロンの「アバター」・・・これらの映画では、星を一つの大きな生命体としてとらえ、そこに生きる生きものはすべてつながっていることを描いています。フラーの概念は、地球の有限性に警鐘を鳴らしたものでしたが、これらの映画では、その概念を生命のつながりにまで広げています。地球とは、それ自体が、それ全体が、ひとつの大きな生命体なのです。

みんなの生命をまもりつづけたい

「みんなの生命をまもる」ということは、私たち人間の生命をまもることにとどまりません。それは、生きとし生けるものすべてをまもること。いや、それだけではありません。それらの生きものが命のよりどころとしている周りの環境・・・すなわち土や石や水や空気をまもること。それは地球をまもること。すなわち、私たちは、私たち自身はもとより、動物や植物、土や石さえも、すべての命あるものの健康、そのためにあるべき環境をまもっていかねばなりません。

私たち広島県環境保健協会は、きれいな水や空気、生きものの「個性」と「つながり」を大切にし、みんなの生命をまもりつづけていくことを大きな使命として、社会に貢献していきます。

 

一般財団法人 広島県環境保健協会[略称:環保協(かんほきょう)]

営業時間:平日(月~金) 8:30~17:30

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